小森収インタビュー「各務三郎 ミステリがオシャレだったころ」

早川書房『ミステリマガジン』の第4代編集長、各務三郎(太田博)。

その在任期間(昭和43年/1968年〜昭和48年/1973年)は、直木賞でいうと、第60回台に当たる。

推理小説はこの時期も、直木賞から縁遠かった。

小森収のインタビューから、各務三郎直木賞観が垣間見える部分がある。

『はじめて話すけど… 小森収インタビュー集』

定価1800円+税、著者 小森収各務三郎皆川博子三谷幸喜法月綸太郎石上三登志、松岡和子、和田誠、発行所 株式会社フリースタイル、平成14年/2002年7月5日初版第一刷発行
目次

各務三郎直木賞観は、小林信彦の作品を通して語られる。

小森 私が今回調べて改めてびっくりしたのは、小林信彦さんの起用についてです。もちろんパロディの「中年探偵団」があって、すぐに「深夜の饗宴」が始まるんですが、一年くらいで、またすぐに『大統領の密使』が始まる。切れ目がないんですね。ほぼ毎月、なにかの連載が続いてるんです。
各務 そうかもしれない。あの人はユーモアというものを非常に高く買ってるわけでしょう。俺も結城昌治は『白昼堂々』で直木賞を取るべきだったと思ってたくらいだから、小林さんはユーモアのあるもので直木賞を取れる、取るべきだと思ってた。
小森 ということは、あいだに「深夜の饗宴」はありましたが、『大統領の密使』みたいなものは、最初から狙っていたということですか。
各務 そういう小説で、直木賞を取れるはずだと。取れば、日本の小説も変わるんじゃないかぐらいのことは、若気の至りで、考えてはいた。『大統領の密使』なんて、いま読んでも、いい作品だと思うんだけどね。かなりユニークなものだけど、今度は、それを評価する批評家がいない。」