河盛好蔵「文壇クローズアップ 文学賞について」(『小説新潮』昭和37年/1962年2月号)

河盛好蔵は、文学賞ファンにとっては心強い文人のひとり。

なぜなら、文学賞は数が多ければ多いほどよい、という意見の持ち主だからである。

専門がフランス文学だからなのだろう。文学賞大国・フランスの姿を是とする考え方が、その根底にはあるようだ。

小説新潮』昭和37年/1962年2月号(第16巻第2号 新春特大号)

編集兼発行者 佐藤俊夫、定価 金一二〇円(送料二十四円)、発行所 株式会社新潮社

※この号の河盛「文壇クローズアップ」は、「秋声全集の刊行」「外村繁君のこと」「文学賞について」「芸術院新会員」の四つの小見出しが立てられている。「文学賞について」の一節より。

「フランスには、とくに若い人たちを対象にした文学賞が少なくない。必ず新人に限ることを指定したり、受賞者の年齢を制限したりして、できるだけ若い人たちを表彰しようと努力している。有名なゴンクール賞などは、新人である上に、貧乏であることという条件までついていた。そのためにプルーストが候補にあげられたとき、彼は金持だからという理由で反対する審査員がいたことは文壇史の一挿話になっている。
 私は文学賞というものはいくらあってもかまわないと思っているから、我と思わん出版社はぞくぞくと文学賞を出すがよいと思う。そして、審査員を思いきり若くして、彼らが支持する、むしろ将来に望みのある新人に賞を出すようにしたら、文壇も大いに活気づくのではあるまいか。そしてその賞金は、それだけで二、三年遊んで暮らせるような巨額なものであれば一層によろしい。もっとも、そうなると、審査員のあいだで賞のたらいまわしが始まるかもしれないが、いずれにしても、文学賞が文壇功労賞となっては面白くない。」

 まったくまったく。