第一回サンデー毎日小説賞入選作発表

サンデー毎日』主催の公募小説賞は歴史が長い。

その入選作が直木賞候補になることもある。ただ、入選作より低い評価しか与えられなかった選外佳作が、入選作をおさえて直木賞候補に選ばれる例もある。

第44回(昭和35年/1960年下半期)の木戸織男「夜は明けない」もその一つ。

サンデー毎日特別号』第40号(昭和35年/1960年6月)

目次

※入選(第一席)は、懸賞小説界ではおなじみの顔、早崎慶三。選外佳作(第二席)は二作品。その他、最終候補に残ったのは竜城秀雄「魔波」、青葉赫「神のない時代の神」、筑紫次郎「女敵討ち」、寺島珠雄「演出者不在劇序幕」、桂京子「藍師一代」の五作。
 選考委員の丹羽文雄は「年二回私は芥川賞の候補作品をよんでいる。今回の第一回サンデー毎日賞の候補作品が、それにくらべて遜色のなかったことがうれしかった。読み甲斐を感じた。」と書いている。
 その丹羽の「夜は明けない」評は次のとおり。

「「夜は明けない」も、強力だったが、この形式は破綻のすくないものである。最後の泣きごとが私には残念であった。鉄のような意志人ので全うしてもらうか、最初からためらっているように書かれているか、そのどちらかにしてもらいたかった。」

 結末が甘い、というのが大方の委員の評であり、それが惜しくも選外佳作となった要因らしい。