花村奨(土岐愛作)「年譜」

花村奨(すすむ)は別名・土岐愛作。戦前の直木賞候補作家である。

サンデー毎日大衆文芸での佳作から出発し、長谷川伸と土師清二に師事。

新鷹会の会員となり、『大衆文藝』の編集長も務めた。

没後、山本和夫の手により『行路』という文集が編まれた。

『行路――花村奨文集』

編者 山本和夫、発行所 朝日書林、平成5年/1993年10月30日第一刷発行
目次

  • 序にかえて 草稿(東洋大学の思い出)
  • 天狗団扇
  • 牛乳育ち
  • 子供の科学
  • けらけら節
  • 毎日毎日
  • Monologue
  • 私のふるさと
  • 働きの中に喜びを感じる県民
  • ふるさとの訛なつかし
  • ひとだま
  • 美濃焼地帯
  • 東濃のむかし正月
  • ふるさとの五日間
  • ホタルの記憶
  • 同窓会というもの
  • 首途(かどで)
  • わが歌ものがたり
  • 愚人録
  • 一本の蜜柑の木に寄せて
  • あらくさ 抄
  • 老残抄
  • 遠いあかり
  • 悩獣
  • 投書仲間
  • 芽生えのころ
  • 田鶴
  • 若草創刊前後
  • 一本ずつの釘
  • 釘――F翁逝く
  • 秘法
  • 坂口安吾
  • 武者小路実篤
  • 井伏氏のこと
  • 直木賞」以前の司馬氏(連載 文壇秋の夜ばなし)
  • 梅崎春生氏夫妻(連載 文壇秋の夜ばなし)
  • 林芙美子女史
  • 若さと円熟の村上元三
  • 村上元三(連載 文壇秋の夜ばなし)
  • 山岡さんの酒の肴
  • 山岡荘八氏(連載 文壇秋の夜ばなし)
  • 山岡さんの史談と文学碑
  • 『工程』・百田先生とのえにし
  • なつかしき抒情画家
  • 「大衆文芸」と長谷川先生(連載 文壇秋の夜ばなし)
  • 酒と作家たち(連載 文壇秋の夜ばなし)
  • わが師・長谷川伸(連載 文壇快人伝)
  • にせ神託に救われて
  • 長谷川伸の二十六字の詩
  • 長谷川伸の生誕百年
  • 第一九回「長谷川伸の会」の記
  • 占い好きときれい好き
  • 終の栖のこと
  • 晩冬一唱
  • 毎日毎日
  • 裏通り
  • 絵のない夢
  • 悲愁
  • 眠り、そして夢
  • 少女雑誌のころ

※巻末に、二男・花村武穂による「年譜」が付いている。うち抜粋して引用する。

「明治四四年八月一二日 花村奨、父・花村浅七、母・志う
 長男として岐阜県大垣市久瀬川町一〇七番地にて生れる
(略)
 大正一二年 小学校五年頃
 「少年世界」「日本少年」「少年倶楽部」投書欄へ詩、短歌、俳句等の投稿に熱中する
(略)
 昭和四年三月 岐阜県立東農中学校卒業(第三〇回卒業生七四名)
  六年一一月一五日 処女詩集「チヤブ屋の女」上梓
  七年六月一日 「東洋・文科」(東洋大学同人雑誌)を発行
  八年三月 東洋大学東洋文学科卒業
   同年、(株)右文書院嘱託となる
  九年 土岐市下石小学校奉職
(略)
  一四年五月 小説「首途」サンデー毎日第二四回「大衆文藝」佳作第三席に入選、第九回直木賞候補となる。同年「美しき首途」として映画化され(監督・島耕二、脚本・伊藤章三)、文部大臣賞を受賞
   六月 (株)宝文館入社
    雑誌「令女界」「若草」編集のかたわら各種の雑誌に土岐愛作の筆名で小説を発表する
(略)
  一六年一〇月一五日 小説集「美しき首途」を上梓
(略)
  一七年一二月八日 八日会の会員となり、長谷川伸、土師清二に師事する
(略)
  二〇年 財団法人・新鷹会会員となる。(八日会を吸収合併)
(略)
  二一年 宝文館に復帰。取締役、企画・編集局長
(略)
  二九年 宝文館退社。文筆生活に入る
(略)
  三八年 大衆文芸編集長兼新鷹会事務局長に就任。以後昭和六〇年まで二十二年間
(略)
  五五年三月 「紙碑」同人となり、以後、多数の詩を発表する
(略)
  五六年三月 森の会を主宰。詩文誌「森」創刊
(略)
 平成四年一〇月三一日 死亡(享年八十一歳)
  一二月二五日 詩文誌「森」終刊号
   同人・右近稜、山本和夫の尽力と同人多数の追悼の辞とともに「花村奨追悼号」として終刊となる。」

徳島新聞』昭和47年/1972年11月に「連載 文壇秋の夜ばなし」を、『大塚薬報』昭和49年/1974年に「連載 文壇快人伝」をそれぞれ発表しているらしい。ぜひチェックしたいのだが、未見。