井出孫六「芥川賞・直木賞――周辺の人物史」

直木賞作家の井出孫六は昭和61年/1986年当時、『エコノミスト』誌に「東京歴史紀行」を連載していた。

その第10回が「芥川賞直木賞――周辺の人物史」。昭和10年/1935年文藝春秋社のあった大阪ビルのことなどを紹介している。

エコノミスト』昭和61年/1986年3月18日号(第64巻第12号通巻2669号)

定価390円、編集長 戸田栄輔、編輯兼発行人 松澤太平、発行所 毎日新聞社、昭和61年/1986年3月18日発行
目次

  • 表紙……撮影 由井龍太郎
  • IN THE NEWS
    • 経済 始まった新日比経済関係の模索
    • 国際 パルメ暗殺で揺らぐ北欧社民主義
    • 金融 自己資本充実で銀行経営は「健全」か
    • 科学技術 掛け算で世界最高速のICを開発
    • 政局 政権が末期に近づくとき……
  • 特集 フィリピン新政権の基盤
    • 現地報告 鳥はカゴから放たれた――軍部と教会はどう動く――……芝生瑞和
    • インタビュー われわれは正義を求めた……(枢機卿)ハイメ・シン 聞き手・芝生瑞和
    • 前途厳しい経済再建――債務返済条件の緩和めざす――……野沢勝美
  • 日米経済摩擦の無視された論点――強いドル・強い円併存時代の対応策を――……山本修
  • 〈対談〉いじめ 受験戦争 臨教審――競争主義に代わる共生の原理を――……飯島衛・日高六郎
  • 漂流続ける臨教審――「会議室」からの教育改革はムリ――……原田三朗
  • 連載 東京歴史紀行 昭和史の現場を歩く 第一〇回 芥川賞直木賞――周辺の人物史……井出孫六
  • 時評 今、エネルギー技術の研究開発を……竹内啓
  • 経済記事Review 日米中小企業対策論争 ほしい専門家の見解
  • 連載 情報社会の現在 第二部 コンピュータと人間(4) 電子になった他人との対話――年長のハッカーの人間関係論――……野田正彰
  • 現代に問うフランスの革新と伝統――「近代化」へ十字架を担う社会党――……平田清明
  • エコせみなあ 「団塊の世代」の行方――富士通研究所……高橋英男
  • 連載 カラーグラビア タウン 新しい波――過密 解消(大阪府豊中市庄内)……河合達雄
  • インタナショナル・サーベイ
    • 雑誌から
    • 新聞から(ワシントン情報)石油税導入の可能性
    • 海外経済
      • (西ドイツ)持続的回復を見込む政府
      • オマーン)高成長路線の転換を迫られる
  • 東西南北 (島根)湖底が語る一六世紀の産業公害
  • 読書
    • ▽香港▽シンポジウム 歴史のなかの物価▽コンピュータ革命と現代社会1
    • 新刊の窓 ▽ザ・カルフ▽コンピュータと教育▽縄文文化と日本人
    • 読書ノート 三種類の本……日下公人
  • 企業力診断 ▽住友倉庫ユニ・チャーム
  • 景気動向統計
  • 国際経済統計
  • 談話室
  • 日誌
  • 記者の耳
  • 見る聴く
  • 次号予告

※井出の文章がまず取り上げているのが宇野浩二芥川賞選評について。もはや有名な宇野の粘着質な選評をもとに「文学の鬼」ぶりを細かく追っている。つづいて、元・文藝春秋社員の嵯峨信之(本名・大草実)のもとを訪れて取材を刊行。しかし嵯峨は「芥川賞直木賞創設のころの記憶はあまりないんだ」と語っている。残念。
 文藝春秋社は昭和2年/1927年、麹町下六番町の旧有島武郎邸から、内幸町の大阪ビル一号館に移転した。

「「大阪ビルに移ると同時に、文藝春秋は菊池さんの個人経営から株式会社に変りましてね、菊池さんも“文壇の人”から“社会人”“企業人”にひとまわり大きくなった。なにしろ雑誌『文藝春秋』は毎月一万部づつ増えるような勢いだったから……」
 文芸雑誌『文藝春秋』はあっというまに綜合雑誌の体裁をおび、大草青年はいつしか軍・政・財界を担当する編集者となっていった。」

 嵯峨信之にはぜひニッパチ説の真偽を語っておいてほしかった……。